2015/01/16

イヤなNEWSとイイ映画。



今日の朝刊に、「サザン桑田さん謝罪 ネットでは賛否」という見出しの付いた記事が載っていた。
何のことかと思いきや、サザンの年越しライブで桑田クンがズボンのポケットから「紫綬褒章」を取り出して、「まず5000円からいきましょう。欲しいひと」とオークションにかけるまねをしたそうで(もちろん単なるシャレ)……そのことに対して所属事務所に抗議や批判が殺到し(中には事務所前で抗議する人も出たそうだ)、事態収拾のために事務所&桑田クンが「お詫びのコメント」を発表したとのこと。
はあ~?である。だって、(権力に靡かない)ロックンローラーだもの、「国からもらった勲章」だろうが(寧ろ国から貰ったものなら余計に)、このくらいのジョークをかますのは普通じゃないの!?逆に軽く笑い飛ばしてくれなきゃ……と思っている私には、「抗議や批判の殺到」も「謝罪コメント」も不可解かつ不愉快この上なし。日本を代表するお茶目な天才ロックンローラーの冗談も通じないイヤな社会になったなあ、と嘆くほかない。どうも、この国には、自分の気に入らない人間や言動には徹底的に反発して(匿名の徒党を組んで)、謝罪させたい、屈服させたい、あわよくば社会から排除したいという憎悪に満ちた歪んだ精神(愛国心?)を持つ人たちが多々いるように思う。
それを示すように、ネット上では早速こんな書き込みも「ネットが反日桑田に勝った。俺たちの完全勝利だ」……まったく開いた口が塞がらない。爆問・太田光の言葉じゃないが、これまで桑田佳祐がどれだけ日本を明るくしてきたか。どれだけ日本人を勇気づけてきたことか!それを忘れて、こんな書き込みで国民的人気ロックバンドのリーダーを傷つけ、社会を暗くしている人間の方がよほど「反日」ではないか!?と逆に言い返したいくらいな気分だ(もちろん「反日」という言葉自体嫌いだけど)。
このように、意見や意識の違う他者(or他国)を屈服させることで自分(たち)のアイデンティティを確認するというかなり病的な?風潮。何とかならないものか。
(先日も「爆笑問題」の政治家ネタをNHKが自主規制してボツにするなど、何を恐れているのか分からないが、あまりにも社会全体に許容力がなくなっている気がする。これでは、風刺もシャレも通じない国、自由であるべきはずの「ネット民」が自ら言論を検閲し、表現の自由を封殺するような不気味な社会になってしまうのではないだろうか…)

続いて、話も気分も変えて「イイ映画」の件……

先日、TSUTAYA「発掘良品」の棚で見つけた1987年製作のイギリス映画『ウィズネイルと僕』(Withnail and I)。
本国イギリスでは英国映画協会による「20世紀の映画Best100」中の 29位にランクされ、定期的に上映されるなど、公開から20年近く経つにも関わらず多くの人に愛され続けている作品だが(あのジョニー・デップも「死ぬ前に見たい映画」と大絶賛)、日本では去年の6月に閉館した「吉祥寺バウスシアター」で限定的に上映されたのみ。201411月に初めてDVDBDが発売されたそうだ。
というわけで、日本においては「幻の一作」。私も去年、バウスシアターのクロージング作品としてリバイバル上映された際に見逃したこともあり、どうしても観たかった作品。TSUTAYAで見つけられたのは、ラッキーだった。

で、どういう内容かと言うと……舞台は60年代末のロンドン。ふたりの売れない役者(破壊的な性格のウィズネイルと、彼に振り回されてばかりの不安気な「僕」)が、ゴミで溢れた汚い部屋で同居生活。しかし、いくら待っても仕事は来ない。ひもじく貧しく能天気な二人のグダグダな日々を埋めるのは、酒とドラッグ。やがて「これじゃダメだ、何とかしなくては」と思い立った彼らは、ウィズネイルの叔父が所有する田舎のコテージで気分転換を図ることに(このユーモラスなゲイの叔父モンティとの絡みがかなり笑える)……というお話。

オープニングでいきなりプロコル・ハルムの名曲「青い影」が流れた時には、「胸に沁みる青春モノか?」と思ってしまったが、要するに、二人の売れない役者が、ダラダラといい加減に日常を生きているだけのストーリー。特に衝撃的な出来事も、心震える友情物語もなく(もちろん甘美なシーンもない)、ただ全編、無計画・無軌道で刹那的な生活を送る「ダメな二人」がふざけているだけのような「青春コメディ」だが、ゲラゲラ笑ってラストでドッカーン!……みたいな、自由で、悲惨で、無軌道な青春が象徴する60年代という特異な時代の終焉を告げる、鳥肌モノの名シーンが最後に用意されているのだから油断できない&堪らない。

長い髪を切り、洒落たジャケットに身を包んだ「僕」が別れを告げて去った後、雨の中、ロンドン動物園のオオカミたちの前で、びしょ濡れで「ハムレット」の台詞を朗々と叫ぶ狂おしくも哀しいウィズネイルの姿……「グダグダな日々」の奥底に燻っていたマグマのような切なさを、一気に噴出させるこのラストシーンの素晴らしさは、一瞬、背筋がスーッとして、テレビの前で固まってしまった私のように、イギリスが生み出す数々のアンチ・ヒーローに魅せられ、その姿に憧れつつ60年代を生きた方々の胸を熱くすること必至。DVDとはいえ、今年の映画的幕開けを飾るに相応しい作品だった。

 

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