《元気? 奄美民謡「あはがり」は久々に心震える唄です。昨年No.1ミステリー「その女アレックス」 会いたいね!》……元旦の朝、岩手・大船渡に住む同い年の友人M君から、こんな文面の年賀状が届いた。
「あはがり」は、NHK BSプレミアム「新日本風土記」のテーマ曲。奄美の島言葉で「すべてがあかるい」という意味らしい。早速You Tubeで聴いてみたが、歌詞がまったく分からず少し困惑。でも、その歌声は優しく力強く神秘的で、心に深く染み入ってくるような不思議な魅力に満ちていた。
声の主は、奄美島唄伝承の第一人者であり「奄美の美空ひばり」と称される「朝崎郁恵」さん、77歳。「あはがり」は、奄美島唄をベースにした朝崎さんのオリジナル曲とのこと。奄美の言葉で唄われる歌詞の意味が気になって、NHKの番組ホームページを覗くとその意訳も併せて載っていた。
浮世・・・仮島に何時(いてぃ)がでぃむ 居らりゅむぃ
情けあれいよ 仮那(かな)くぬ世ば うさむぃれぃがでぃ
節や水車めぐりあわそ
てぃきぬあはがりし たましゃうどぅてい
いきしゃん くとぅあてぃむ 天と大地や
てぃきぬあはがりし たましゃうどぅてい
(意訳)
情けあれいよ 仮那(かな)くぬ世ば うさむぃれぃがでぃ
節や水車めぐりあわそ
てぃきぬあはがりし たましゃうどぅてい
いきしゃん くとぅあてぃむ 天と大地や
てぃきぬあはがりし たましゃうどぅてい
(意訳)
この世は神様からいただいた仮の世
いつまで留まっていられましょうか
命を敬い 生きていきなさい
この世の生をなし終えるまで
時は巡る 水車のように だからまた巡り会える
月明かりの下で 人々は喜び 魂が踊り明かす
どのようなことがあろうとも 天と大地の間
月明かりの下で 人々は喜び 魂が踊り明かす
いつまで留まっていられましょうか
命を敬い 生きていきなさい
この世の生をなし終えるまで
時は巡る 水車のように だからまた巡り会える
月明かりの下で 人々は喜び 魂が踊り明かす
どのようなことがあろうとも 天と大地の間
月明かりの下で 人々は喜び 魂が踊り明かす
今日(23日)の夜9時からBSプレミアムで放送の「風土記 温泉三昧」の中で、改めて聴いてみたいと思う。
で、もうひとつM君絶賛の『その女アレックス』(ピエール・ルメートル著)だが、彼に薦められるまでもなく、年明けに読むつもりで仕入れていた一冊……「お互い面白本を見つける嗅覚は、まだ衰えてないね」と胸の中で呟き、読んだ本の“褒め合い薦めあい(時々貶しあい)”をしていた遠い昔を思い出しながら、彼の言葉に急かさられるように頁を捲り、450頁を2日ほどで読み終えてしまった。
その興奮というか、久しく味わったことのないスリリングでミステリアスな読書体験をネタバレ込みで説明するのは、これから読む人の楽しみを奪うことにもなると思うので避けるとして、ほんのさわりだけストーリーを紹介。
《ある晩、パリの路上で若い女(アレックス)が、白いバンに乗った男に突然襲われ誘拐された。目撃者の通報を受けて警察が捜査に乗り出すが、車の行方はもちろん、被害者の身元も、誘拐犯の正体も、その目的もわからない。その後、地道な捜査と思いがけない展開を経て、誘拐事件の謎のベールは少しずつ剥がれていくが、そのときにはすでに捜査の焦点も「その女を救えるのか?」から「その女は何者なのか?」へと変わっていた》(訳者のあとがきから抜粋)……という、ん?ん?んんん!?な逆転に次ぐ逆転のサスペンス。事件を追う、警部及び捜査員たちのキャラクターも魅力的だ。(物語の鍵は、孤独な女の壮絶な過去に在る)
というわけで、「読まずに死ねるか!」と、空の上から今は亡き面白本のオススメ屋・内藤陳さんの声が聞こえてきそうな超ド級の犯罪小説。退屈な脳を直撃する極上のオススメ本!