2025/02/12

1月中・下旬&2月上旬のメモ②


124日(金)

新宿武蔵野館で『蝶の渡り』(監督:ナナ・ジョルジャゼ/製作2023年、ジョージア)鑑賞。

首都トビリシを舞台に描いたジョージア映画と聞けば、真っ先に思い出すのは「岩波ホール」(20227月に閉館)で観た名作『花咲くころ』……

それから約10年、《1991年にようやくソ連からの独立を果たし、希望に満ちた“どんちゃん騒ぎ”に明け暮れた若者たちの27年後を描く。原題は「蝶の強制移住」、蝶は住む場所を移されると生きていけないが、生活の糧を失った芸術家たちはいかに戦後を生きたのか。ヨーロッパとアジアが交差するかつての幻惑都市、トビリシを舞台に、困難な中でも輝き続ける人生をユーモアたっぷりに描く》という紹介文に心そそられ“あの時の感動をもう一度”的に、逸る気持ちを抑えつつ劇場に足を運んだのだが、美しいラストカットに魅せられながらも、正直、少し肩透かしを食らった気分に(特別、悪い気分というわけではないが…)。

自分自身がジョージア及びその土地の歴史的背景を知らないせいかもしれないが、「(甘美で痛切な記憶を共有している)芸術仲間たちが暮らす半地下のコミュニティ」という設定 のユニークさに内容が伴っていない。というか、そこに集う人々の過去・現在及びそこで交わされる会話に全くリアリティが感じられず、彼らは何をしたいのか?それとも何もしたくないのか?も含めて“輝き続ける人生”はいったい何処に?と言った印象。

加えてユーモアのセンスも微妙で(笑える場所もあったが総じて“薄味”の悲喜劇といった体)、映画を観ながら見知らぬ異国の街で迷子になった気分に……で、そんな?(ハテナ)の連続なのに、“希望の灯を次世代に託す。継承する”というキレイな終わり方で良いのだろうか?という疑問も沸々。託すべき“希望の灯”を見失うほど世界は逆風に包まれているというのに。

※この日も「西武池袋沿線で仕事。からの新宿武蔵野館」。ランチは30年ぶり?の新宿「石の家」でレバニラ定食。

129日(水)

森永卓郎氏逝去の報あり。

森永さんご冥福をお祈り致します。衰退していく今の日本を憂い最後まで命をかけた警告を発し続けた貴方は世界中の誰よりもロックでした。感謝》という歌手ダイヤモンドユカイ氏の追悼コメントをネットで見たが、私も同様の思い。財務省による政治・経済支配に反旗を翻しつつ消費税の闇を暴き、最後まで新自由主義に抗い続けた彼に、心からの敬意と哀悼の意を表したい。(にしても、日曜朝の「がっちりマンデー」に森永さんの姿がないとは……)

131日(金)

今年初の新年会。午後1時、新宿の居酒屋「丸安水産」に9人の仲間が集まった。

数年ぶりに会う友人もいたので、幹事(私)の仕切りで、まずは乾杯。続いて各々「近況報告」……「孫が出来た」という目出度い話から、「カミさん」と別居中という「えっ、そうなの?」と言葉に詰まる話。さらに「腎臓移植・肺がん手術・大腸がん手術」を経験した超サバイバーの話もあり、「お互いよくぞ生きてきたよなあ…」という雰囲気に。

飲み会は3時半に終了。2次会は6人でカラオケに……私も3曲ほど(さだまさし『道化師のソネット』、中島みゆき『慕情』、ちあきなおみ『紅い花』)歌ったが、思ったように声が出ず、少しがっかりな気分に。(といって今さら喉を鍛える気もないが)

23日(月)

台湾ハードボイルド『DV 台北プライベートアイ2』(著者・紀蔚然/舩山むつみ訳、文藝春秋)読了。

副題通り、頗る面白かった「台北プライベートアイ」の続編(でも、舞台は台北ではなく「淡水」という街)。題名の「DV8」は主人公の私立探偵「呉誠(ウーチェン)」行きつけのBARの名前(「逸脱」と言う意味の英単語deviateが由来)。彼はその経営者「エマ」に会うのを目的に通い詰めている……というのが今回の基本的な物語設定。もちろん呉誠は「パニック障害」のリスクを抱えたままで、神経症の薬は手放せない。

で、「DV8は俺の錨になってしまった」と独りごちる呉誠のもとに何琳安(通称安安)という若い女性が依頼人としてやってくるのだが、そこからストーリーは急加速。些細なヒントや仕草から過去の殺人事件の真相に迫る「呉誠」と仲間たち、そして「エマ」との関係は?……と、「やはり探偵はBARにいてほしいよね」とニンマリしながら、俄然一気読みモードに突入した次第。まあ、内容はこれ以上言わないが(もうホントに堪らない、止まらない面白さ!)、その代わりに物語前半BARDV8」での音楽絡みの一節を…。

おれたちはみんな、昼間の光の下では化けの皮が剥がれてしまうんだ。

ノラ・ジョーンズが囁くようにI think it’s going to rain todayを歌っている。

割れた窓ガラス   空っぽの廊下

空には死んだように青白く 灰にまみれたような月

人のやさしさがあふれ出て行く 今日はきっと雨が降ると思う

書かれたその詞に惹かれて、ノラ・ジョーンズの「I think it’s going to rain today」を聴いてみた……「囁くように」と言う表現そのまま。BARDV8」で聴けば、もっと心に沁みただろうなあ。と思う(ちなみにニーナ・シモンのI think it’s going to rain todayもオススメ!)

 

2025/02/08

1月中・下旬&2月上旬メモ①


113日(月)

歌人・エッセイストであり、中高で国語科の非常勤講師として働く著者の学校教育をめぐるエッセイ集『がっこうはじごく』(著者・堀静香/百万年書房)読了。

フランスの哲学者ミシェル・フーコーの『監獄の誕生』にヒントを得たらしい刺激的なタイトルに惹かれて手に取ったのだが、内容は至って真摯で常識的(とても読みやすいが、“思考的ラジカルさ”を期待した分、少し拍子抜け)。要するに、フーコーが批判したように「一つの知の体系、定められた価値規範によりよく従うようになる」という意味で、今も「学校は地獄、教室は監獄」のままだが、その中で、自分自身の言葉を持ち、自由を獲得するために、どんな気づき方があるのだろう?…総じて「自由な学び」が生まれる教室とは?という問いかけの書といった感じ。心優しい著者なりの「知の解放」への一歩、教師として、また歌人としての飛躍へのチャレンジと捉えたい。(私自身は、特に中学時代に「自由な学び」を味わえた一人。そのお陰で70年以上“定められた価値規範に従う”ことなどなかったが、その代わり何かと憤ることの多い人生に……別に悔んじゃいませんが)

 

117日(金)

午前中は練馬方面で仕事。その足で池袋へ。池袋シネマロサで『敵』(監督:吉田大作、主演:長塚京三)を観てきた。(筒井康隆の同名小説を『桐島、部活やめるってよ』等の吉田大八監督が映画化)

主人公は、仏文学者で大学教授の職をリタイアし、祖父の代から続く日本家屋に一人暮らす渡辺儀助77歳(妻とは死別)……と書くと、寂しい独居老人の姿を思い浮かべるだろうが、“質実剛健”という言葉を久しぶりに思い出すほどの整った暮らしぶり。加えて料理は上手いし、蓄えもまあまあ豊富。“孤独”とも無縁そうで、時には友人と酒を酌み交わし、教え子を招いてディナーも振る舞う。正に“イケおじ”ならぬ“イケ爺”といった風情だったが、物語中盤、書斎のパソコン画面に突然「敵がやって来る」という不穏なメッセージが流れた辺りから、“整った”雰囲気は一変。普段はインテリらしいプライドの高さによって抑え込まれていた煩悩が、彼の妄想の中で顕在化、哀しくも可笑しい“夢と妄想の人”儀助さんの余生が描かれる……という「さすが筒井康隆!(&吉田大作)」的展開。その筋立ての面白さに拍手し(もちろん心の中で)、ほど良いユーモアに包まれながら、現世の煩いや執着から離れて「穏やかな死」を迎えることの難しさを、改めて思い知らされる108分だった。

(というわけで、新年早々、日本映画の好調さを強く印象付けられた一本。早くも日本アカデミー賞主演男優賞が噂される長塚京三はもとより、儀助の現実と妄想を行き来する3人の女性「瀧内公美、河合優香、黒沢あすか」も実に個性的かつ魅力的……河合優実も良いが、この映画でのイチ押しは瀧内公美)

 119日(日)

兵庫県議・竹内さん死去。デマを拡散させ、誹謗中傷を繰り返し、彼を自死に追いやった「立花孝志」を、兵庫県警はなぜ逮捕しないのか?!(立花の動画に拍手したり、その嘘を真に受けファクトチェックもせずにメディアで流す「東国原」及びその他大勢も同罪)

本当にイヤな日本になったなあ……とてもついていけない(ついていく気もないけど)。

夜は『べらぼう』からの『御上先生』TBS21時~ 脚本・詩森ろば、主演・松坂桃李…初回から早くも傑作の予感!)


121日(火)

テレビに顔が映るだけで凄くイヤな気分になる「トランプ」の就任式。不吉な予感しかないが、4年間の間にアメリカは、世界は、そして日本はどうなっているのだろう?

(ちなみに、トランプは、私的に「世界から消えて欲しい5人」のトップ。残りの4人はプーチン、イーロンマスク、ネタニヤフ、ルカシェンコ……つい最近、飲み会の席でそれを友人たちに話していたら「習近平は?」と聞かれた。中国は「習近平」というより中国共産党の一党支配体制が問題なわけで……でも、まあ6番目ですかね~)