2020/01/09

“ハンマーを持て。”&2019面白本ベスト10




新年恒例、宝島社のエッジの効いた意見広告が実にイイ。(西武そごうの正月広告「さ、ひっくり返そう」にも感心させられたが)

宝島社の企業広告

こんどの壁は、見えない壁だ。

あれから30年、ベルリンで壁を壊した人類は、

なんのことはない。せっせと新しい壁をつくっている。

貧富の壁、性差の壁、世代の壁…。

見えない分だけ、やっかいな壁たち。

そろそろもう一度、ハンマーを手にする時ではないか。

私たちはまた、時代に試されている。

 

さて、今年の「ブログ始め」。まずは前年同様、2019年に読んで面白かった本をサクッと。(順不動のベスト10

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ)
※無類の面白さ。国粋主義、排他主義、ヘイト、LGBTへの偏見等、この国にも様々に“バカがつくった壁”が存在しているが、自分の周りから、出来ることから、優しさや寛容さを広めていかなければ…と、気づかせてくれる珠玉のノンフィクション。

9条入門』(加藤典洋)
※敬愛する文芸評論家・加藤典洋氏の遺作。天皇の全責任発言や戦争放棄を巡る経緯、さらに敗戦時に最優先された「国体護持」等々……今後の憲法議論はこの本を無視して成立しないのでは?と思える一冊。「815日に立ち帰れ」という言葉が重く胸に残る。

ベルリンは晴れているか』(深緑野分)
※第二次世界大戦敗戦国のドイツで起きたある殺人事件を少女の視点から描いた秀作。敗者となったドイツ人達の怯えと戸惑いと絶望感が漂う雰囲気&破壊された町を覆う臭気すら感じられるような生々しいミステリー。とても日本人の作家によるオリジナルとは思えない臨場感に圧倒された。

牙~アフリカゾウの「密漁組織」を追って~』(三浦英之)
※元アフリカ特派員の著者がアフリカ南部における象牙マーケットの全貌を描き出し、取引された象牙の行く末と私たちの生活を結びつけた衝撃のノンフィクション。殺されたゾウとテロリスト、そして日本の印鑑文化。それぞれの点が線になってつながっていく。

82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ)
※韓国は今「フェミニズム文学」が“熱い”らしいが、この本も小説というより“男尊女卑社会”の理不尽な実態を鋭く暴いた告発の書といった体。「ジェンダーギャップ指数」が153ヵ国中121位の国に生きる男たちにとっても、決して他人事ではないはず。

感情天皇論』(大塚英志)
※「象徴天皇制とは国民に対する“感情労働”だ」という考えに至った明仁天皇(平成天皇)と、この国で生きる人々とのディスコミュケーションが、公的な天皇を支えているというパラドックス……天皇制は本当に私たち日本人に必要なのか?政治的利用から離れて天皇は存続可能なのか?など、天皇制への思考の入口として読まれるべき一冊。

「反緊縮!」宣言』(松尾匡・編)
※「金がない、と言われたら、誰も何も言い返せない。財政赤字というものが、人を殴る棒のようになった」「負担を共有することの断固たる拒否、他者に対するあからさまな敵意、世界のすべてを勝ちか負けかで判断する態度、こういうものの中心にあるのが、もうこの国には、この世界にはお金がないんです、という強固な信念で、この信念がさまざまなヘイトスピーチや自己責任論を生み出して、全体として緊縮文化とでもいうべきものができあがってしまった」という岸政彦氏のエッセイをはじめ、論者それぞれが今の日本社会の不寛容さに触れており、そうなったのは緊縮政策のせいだという主張が通底している。(というわけで、私も「反緊縮」に賭けてみたいと思うようになった一冊)

ブラックバード』(マイケル・フィーゲル)
※刹那的にテロを起こした殺し屋が、その場にいた8歳の少女を攫い、彼女が18歳になるまでの歳月を共にする物語。その出だしからして、愛も優しさも救いもない、めちゃくちゃな話だが、徐々に非日常的な二人の日常が醸し出す不思議な叙情性に引き込まれ、完読。

父権制の崩壊 あるいは指導者はもう来ない』(橋本治)
※父権制の幻想など、自分の中ではとっくの昔に崩壊しているが、この国を牛耳っている連中は、未だにその幻想にしがみついているようだ。で、読みながら思った。「(日本社会が加速度的に衰退・劣化している)今こそ、橋本治が必要なのに…」と。

国体論 菊と星条旗』(白井聡)
※“発狂した奴隷たち”と題された一節。「結局のところ、(戦後対日支配の要点を、日本人の欧米人に対するコンプレックスとアジア諸民族に対するレイシズムを利用することだと見なしていた)アメリカが戦後日本人に与えた政治的イデオロギーの核心は、自由主義でも民主主義でもなく、「他のアジア人を差別する権利」にほかならなかった」という指摘に、「なるほど」と頷かざるを得なかった。

以上。今年も当ブログをご愛顧のほど、宜しくお願い致します。

2020年が、皆様にとって素晴らしい一年でありますように。

 

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