2020/03/30

続・近況など


 
(昨日は)朝から大粒の雪が舞う、寒い日曜日。

当然ながら私も“外出自粛中”(五輪ファーストの東京都知事の“突然の自粛要請”にはムカついたが、実際、ここで食い止めないと近々ロックダウンを避け得ない緊迫した状態なのだろう)ということで、日がな一日テレビ&ネット漬け。朝から「サンデーモーニング」のコメンテーターの話に耳だけ傾けながら、ネットで記事やツイッターをチェックしていたら、その著書『結婚のヤツ』が評判になっているエッセイスト・能町みね子さんのこんな言葉に遭遇した。

「頭が良い悪人に統治されるのは怖いけど、頭が悪い悪人に統治されるのは生きる気力がなくなる」

う~ん、まさにそんな感じ(「明けない夜はない」というけど、うんざりするほど長い夜が続いているもの)。不可抗力とはいえ、こんな時に国のトップにいる人間も不運だろうが、世界の危機をこの首相で迎えた私たちこそ不運以外の何物でもない。“希望の灯”連発の記者会見(28日午後6時~)も、実に気色が悪かった。

(「世界中を未曽有の不安と恐怖が覆う中で、日本は持ち前のイノベーションの力で希望の灯を灯す存在でありたい」とか「この聖火こそ今まさに私たちが直面している暗く長いトンネルの出口に人類を導く希望の灯であります」とか、誰の作文か知らないが、いま国のトップに出来ることはそんな三文ポエムで国民を鼓舞することではなく、いかに被害の拡大を防ぐかという「ダメージコントロール」だけ……なのに、企業倒産や生活困窮者の続出が懸念される状況で、こんな歯の浮くようなセリフが吐けてしまうのは、国民の保護ではなく、自分と政権の保身を最優先に考えてしまっているからだろう。
その首相の言葉を借りるなら“今まさに”必要なのは、イチかバチかの商業五輪に導く“希望の灯”でもアベノミクスの失敗を隠すための経済対策でもなく、緊急の生活支援策。
お肉券とか、お魚券とかアホなことを言ってないで、早く具体的な数字を示して日本銀行券を配らなきゃ!)

さて、「続・近況」…

数十年間変わらず購読していた朝日新聞の契約を、先月一杯で打ち切った。「政治関連の記事や社説がありきたりでつまらない」「広告ページが多すぎて中身が薄くなった&読みにくい」など、理由は幾つかあるが、総じて政権に対峙するジャーナリズムとしての姿勢が感じられなくなり、触発される記事がほとんどなくなった事が一番。

そのセンスの鋭さに一目置いている編集委員・高橋純子さんのコラムや時折ビビッとくる「耕論」、思わずニヤリの「朝日川柳」などが読めなくなるのは少し残念だが、抗議の意思を表すためにも一旦リセットすることに…。

というわけで現在は、ニュースなどの情報収集はネット&テレビ中心(『NEWS23』、『報道特集』、BS『報道1930』等、ほぼTBSオンリー)。それプラス、先々週から新たに「週刊文春」が加わった。

きっかけは「森友自殺(財務省)職員遺書全文公開」と題された大阪日日新聞記者・相澤冬樹氏(元NHK記者)の記事と、赤木俊夫氏が遺した「手記」(326日号)。

12頁。一気に読了。痛ましさと、彼の自死を招いた者たちの悪辣さ、その両方が胸に迫ってくる出色の記事だった。
(私同様「手記」を読んだO君、曰く「文春には参議院に会派が作れるくらいの議席をやりたい。立憲とか国民とかの議席を削ってでも。」…もちろん、異議なし!)

で、前号に対する感謝と応援の気持ちを込めて先週も「文春」(42日号)を買ったわけだが、スクープ記事以外にも、
桑田佳祐「ポップス歌手の耐えられない軽さ」、能町みね子「言葉尻とらえ隊」、
みうらじゅん「人生エロエロ」、宮藤官九郎「いま、なんつった?」、
町山智浩「言霊USA」、福岡伸一「パンタレイパングロス」などなど、
刺激的で面白いエッセイ&コラムが目白押し。

これで定価440円(税込)は、お得!というほかなし……と、「朝日」に代わって、「文春」の購読を決めた次第。(4月からは「東京新聞」も購読する予定)

映画は、317日に新宿武蔵野館で観た『レ・ミゼラブル』(監督:ラ・ジリ/製作:フランス、2019年)が抜群の面白さ。さすが『パラサイト』とカンヌのパルムドールを競った作品、グサッと心に突き刺さる傑作だった。(テーマの重さ・深さは『パラサイト』よりコチラの方が上かも? 特にダイバーシティの難しさ…「多様性が大事」と、口では簡単に言えるけれど、差別感情渦巻く世界の中、中々厄介な問題であります)

当然“超オススメ作品”だが、今は不要不急の外出自粛の時。映画館はガラガラで空調も整っているが(いわゆる密閉・密集ではない)、それでも暫く我慢するのが賢明。(ちなみに「新宿武蔵野館」は、ウイルス対策として奇数席のみのチケット販売だった)

※コロナに気を取られ、ここ2ヶ月ほど、あまり本は読んでいないが、タイ旅行の際に機内で読んだ西加奈子の小説『 i 』は、その圧倒的な筆力にゾクゾクするほどの名作。(一気読み必至)
2019年・馬事文化賞を受賞した早見和真の競馬小説『ザ・ロイヤルファミリー』も、臨場感たっぷりで読み応え十分。(競馬やその世界も知らない人でも楽しめるはず)

自粛が長引きそうな今は、先月に買いだめしておいた3冊…恩田陸の『ドミノin上海』、生物学者・更科功の『美しい生物学講義 感動する生命のはなし』、ドン・ウィンズロウ『ザ・ボーダー』、そして友人のTAKENAKA君が送ってくれた『追わずとも牛は往く――労働義務のない村で――』など順繰りにボチボチ…(まずは『ドミノin上海』からスタートかな?)

P.S.
今朝、仕事に向かう電車内で「志村けん死去」の報(ヤフーの号外)を受け取った。

喜劇人としても人間としても、とても魅力的で愛すべき人だった。享年70歳、残念の一言。(にしても、感染症の流行は恐ろしい!)

それから数時間後……《ネット上では「中国人に殺された」などのヘイトスピーチも広がっている》とのこと。

社会学者・宮台真司の言葉を借りればネトウヨ(およびヘイト)は「知性の劣化ではなく、感情の劣化」。日本を代表する喜劇人の死すら憎悪の言葉で汚して静かに悼むことができないとは、何とも情けない世の中になったなあと思う。

以上。とにかく、みんな元気で!(くれぐれも気を付けましょう。お互いに!)

 

2020/03/24

近況など


超ひさしぶりの更新…新型コロナウィルス(COVID-19)感染が世界に広がる中、皆さま変わらず元気にお過ごしでしょうか。
(私自身は体調的にも精神的にも特に変わりなし。今日日、新型コロナ感染への警戒は怠れないが、その終息が見通せない中、過剰に恐れていては身が持たない。手洗い・うがい・仕事後のアルコールウェットなど、普段以上に気を付けながら、なるべく普段通りに過ごそう…と思っています)

さて今日も、東京五輪が1年後に延期になるとか、聖火を車に乗せて運ぶとか(何もそこまでしなくても…もしや、日本経済“火の車”というシャレとか?)、外出自粛で損失を被る事業者(旅行会社、飲食店、イベント開催者、サービス業など)、労働者に対する支援案として外食や旅行代金の一部を国が助成することを検討しているとか、ネットで目にするニュースは、「元・近畿財務局職員の赤木俊夫さんが遺した痛ましい手記」以外は、新型コロナ関連のうんざりするような話ばかり。(にしても、外出や旅行の自粛を要請しながらその代金の一部を助成って、一体ナニ?!…頭のネジが何本か外れているのでは?と疑うほどの愚策)

ちなみに、東京五輪については、他のイベント同様(五輪が何か特権的行事である必要はない。所詮アメリカのTV用コンテンツなのだから)、予定した時期にできないなら中止にする、というのが正しいと思うが、安倍の在任中にやり遂げたい政府と東京都および利権にまみれたIOCにはその意思はなさそう。(五輪の契約上でも「大会中止の決定権はIOCのみにある」らしい。尚且つその契約には「IOCに損害が生じた場合は開催都市が全額を負担」という条項まであるそうだ。「アンダーコントロール」というウソまでついて、東京都も日本政府も、よくもまあこんな契約を結んだものですね~)

延期なんかにしたら、その間、だらだらと余計な金がかかるし、競技施設への影響も必至。すっぱりと開催を諦めた方が経済的な痛手は少ないと思うのだが、それを決める権利すらないとは何ともバカげた話では……というより、契約内容の理不尽さも含め、そもそも「もし中止にしたら国家財政に大変な影響がある」ような、極めて危険なイベントを今時やる必要があるのだろうか?ということですが。(事あるごとに持ち出される「アスリートファースト」という概念も腑に落ちない。全て興行イベントは「観客ファースト」であり、税金で賄われる行事はすべて「国民&社会ファースト」であるはずなのに)

というわけで、日々思っていること(&言いたいこと)は多々あるが、この辺で本題。この1か月間のあれこれを…

タイ4都市(チェンライ、チェンマイ、アユタヤ、バンコク)周遊6日間の旅から帰ったのが先月(2月)の15日。さて、旅行記でも書こうか…と思っていたら、いきなり、年一度の(コトノハ舎的)繁忙期に突入。本業・副業ともに忙しくなり(その合間に確定申告などもあり)、まったくブログに手が回らなくなってしまった。(おまけに新型コロナ騒ぎも加わって)

で、その本業の方だが…225日(火)に、日本水フォーラム代表理事・竹村公太郎さんと主婦連会長・有田芳子さんの対談に立ち合い(テーマは「SDGsの時代」、場所は四谷・主婦会館)、その後、テープ起こしに4日間。編集及びコピーにほぼ10日間を費やしてしまった。(もちろん、その間、副業である「証明写真機」の仕事や家事をこなしつつ…だが、年のせいだろうか、仕事に向かう姿勢及び集中力も若干衰えてきた感じ。なかなかピッチが上がらず、少し焦ってしまった)

といった状況で、「タイ旅行記」を書くタイミングも逸してしまったわけだが、その旅の印象を一言で言うと、圧倒的な格差。(タイは元々階級社会なので、ある程度は想像できたが、車窓から眺めた首都バンコクの姿に目がテン。乱立する高層ビルの豪華さと、川の上で暮らす人々の家のあまりのみすぼらしさ、路地路地に散乱するゴミの山…その対比に慄然とした)

ツアー自体は、「ワット、ワット、ワット…」といった感じで「寺院」見学が主(4都市11寺院)。フリータイムもほとんどないため、大好きな街歩きが叶わず、全体的印象度はイマイチ。“微笑みの国”らしさを感じることもなかった。
それでも、チェンライで食べたパイナップルの美味しさ、ミャンマーとの国境の街・メーサイで飲んだコーヒーのふくよかさ、チェンマイ「メーサー・エレファントキャンプ」での“象乗り”初体験(&象が描く絵の完成度の高さ!!)は、忘れられない旅の思い出。当然、いつもの仲間(今回はMARIちゃんが不参加のため“5人旅”)との語らいも楽しかった。

※現在、タイの首都バンコクは、ムエタイ競技場で発生した集団感染により、感染者数が激増。市内のデパートや娯楽施設などの営業が3週間禁止(3月21日~)になるなど、事実上の封鎖状態になっているとのこと。
旅行が1ヶ月ずれていたら、私たちもどうなっていたことやら…


 

2020/02/04

1月のメモ(初詣、初映画など)



タモリ、麿赤児、三上寛、そして坂本龍一(とのセッション)というゲストの豪華さ、その独創的なパフォーマンスとトークの楽しさに「さすが、山下洋輔!」と、唸らされた『山下洋輔トリオ結成50周年記念コンサート 爆裂半世紀!』(1223日・新宿文化センター大ホール)&旧友たちとの忘年会(1229日)で、いい感じに2019年を締めくくり、迎えた202011日……

天気は快晴。昼頃に訪れた息子夫婦と、ほろ酔い気分で「東伏見稲荷神社」へ。

拝殿の前で軽く手を合わせ、家族と友人たちの無事を祈った後、“おみくじ”の長い列に並んだ。

ここ数年、「凶後丙」など、何故か頭に「凶」の字が入るおみくじばかりを引いてしまうという、この神社との相性の悪さは令和になっても不変。またまた微妙な「凶後吉」……その私の「凶運」に引きずられたのか、今年は連れ合いまでもが「凶後末吉」。即、別の神社での“引きなおし“を決めた。

ちなみに、稲荷神の総本社である京都の伏見稲荷大社のおみくじは32番まであり、大吉・中吉などの吉系は21種類、「凶後吉」など凶から吉に転じるものは6種類、「吉凶未分末大吉(よしあし未だ分からず末大吉)」といった“どちらともいえない”系が5種類あるそうで、凶の字が入る確率もけっこう高い…とのこと。(毎年、凶を引いているのは私だけではないはず)

ともあれ、新米スタイリストから売れっ子スタイリストに飛躍中の愚息&AYUKOさんの御籤には、しっかり「吉」の字が躍っていたので、よしとすることに。(息子は、新年早々、ロンドン、南フランス……と、立て続けに海外ロケ。とにかく忙しそうで、喜ばしい限り)
122日、阿佐ヶ谷の「神明宮」にて“引きなおし”成功。ワタシ「大吉」、ツレは「中吉」……その後、駅近くのパスタ&タイ料理店「IVO(イヴォ)」でランチ。「絶望」という名のスパゲティを食べた。実に旨し。

2日は、例年通りのメンバー(ウエちゃん、MIYUKIさん、長野在住のMOTOMI嬢)で新年会。カラオケの調子はイマイチだったが、楽しい一夜だった。(で、私の正月はこの日で終わり。3日、4日は「証明写真機」の仕事……納金に伺ったファミマの店長さんから、「正月早々、ご苦労様です」とねぎらいの言葉あり。「そちら様こそ」なのだが)

続いて「初映画」……正月気分も早めに抜けた今年の第一作目は、ケン・ローチ監督の『家族を想うとき』(製作:イギリス・フランス・ベルギー、2019年。小屋は池袋シネマ・ロサ)

カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞した『私はダニエル・ブレイク』を最後に、引退を表明したケン・ローチ(83歳)が、現在のイギリスの労働環境を見て引退を撤回。今作を作ったというのだから、その内容は、推して知るべし。
(家族の幸せを掴むために挑戦した仕事のはずが、114時間、週6日の勤務で身体はボロボロ、心はギリギリ。次第に家族との距離も離れていく……という負の渦にハマり、抜け出せなくなった「宅配ドライバー」と、「もとの父に戻ってほしい」と願う家族の物語)

UberAmazonに代表されるギグエコノミー(日雇い経済)企業がもたらした雇用形態の変化によって、「個人事業主」の名のもとに、過酷な労働を強いられ、過度な責任を負わされる「宅配ドライバー」の姿は、明日の日本の労働者たちの姿のようで、「個人事業主」の端くれとしても、他人事とは思えなかった。

そして、年明け2本目は、話題沸騰の韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(監督:ポン・ジュノ、2019年。小屋は「ユナイテッドシネマとしまえん」)

早くも「勝手にコトノハ映画賞(2020)」最優秀作品賞決定!かも?の、超絶エンターテインメント大作。(ホント、面白かった! 凄いぜ!ポン・ジュノ。お見事!ソン・ガンホ)
視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚のみならず、第六感をも刺激する圧倒的な132分。まだ観ていない方は、ぜひ!

P.S.
「初・読書」は、同時に2冊。

黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(畠山理仁/集英社文庫)
※選挙に立候補したにも関わらず、メディアから徹底的に無視され、戦う前に敗北を余儀なくされる(いわゆる)泡沫候補たちの孤独な戦いを追ったノンフィクション。個人的に「マック赤坂、マジ“リスペクト”」の一冊。第15回・開高健ノンフィクション賞受賞作。

大きな字で書くこと』(加藤典洋/岩波書店)
※批評家及び文学者として歩んできた彼の人生が凝縮されたような遺稿集。近づく死の気配を感じつつ書かれたような「詩」や、寂寥感に溢れる文章の数々を読みながら、そのフェアな精神、ぶれない信念の源に少しだけ触れられたような気がした。改めて合掌。

 

2020/01/09

“ハンマーを持て。”&2019面白本ベスト10




新年恒例、宝島社のエッジの効いた意見広告が実にイイ。(西武そごうの正月広告「さ、ひっくり返そう」にも感心させられたが)

宝島社の企業広告

こんどの壁は、見えない壁だ。

あれから30年、ベルリンで壁を壊した人類は、

なんのことはない。せっせと新しい壁をつくっている。

貧富の壁、性差の壁、世代の壁…。

見えない分だけ、やっかいな壁たち。

そろそろもう一度、ハンマーを手にする時ではないか。

私たちはまた、時代に試されている。

 

さて、今年の「ブログ始め」。まずは前年同様、2019年に読んで面白かった本をサクッと。(順不動のベスト10

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ)
※無類の面白さ。国粋主義、排他主義、ヘイト、LGBTへの偏見等、この国にも様々に“バカがつくった壁”が存在しているが、自分の周りから、出来ることから、優しさや寛容さを広めていかなければ…と、気づかせてくれる珠玉のノンフィクション。

9条入門』(加藤典洋)
※敬愛する文芸評論家・加藤典洋氏の遺作。天皇の全責任発言や戦争放棄を巡る経緯、さらに敗戦時に最優先された「国体護持」等々……今後の憲法議論はこの本を無視して成立しないのでは?と思える一冊。「815日に立ち帰れ」という言葉が重く胸に残る。

ベルリンは晴れているか』(深緑野分)
※第二次世界大戦敗戦国のドイツで起きたある殺人事件を少女の視点から描いた秀作。敗者となったドイツ人達の怯えと戸惑いと絶望感が漂う雰囲気&破壊された町を覆う臭気すら感じられるような生々しいミステリー。とても日本人の作家によるオリジナルとは思えない臨場感に圧倒された。

牙~アフリカゾウの「密漁組織」を追って~』(三浦英之)
※元アフリカ特派員の著者がアフリカ南部における象牙マーケットの全貌を描き出し、取引された象牙の行く末と私たちの生活を結びつけた衝撃のノンフィクション。殺されたゾウとテロリスト、そして日本の印鑑文化。それぞれの点が線になってつながっていく。

82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ)
※韓国は今「フェミニズム文学」が“熱い”らしいが、この本も小説というより“男尊女卑社会”の理不尽な実態を鋭く暴いた告発の書といった体。「ジェンダーギャップ指数」が153ヵ国中121位の国に生きる男たちにとっても、決して他人事ではないはず。

感情天皇論』(大塚英志)
※「象徴天皇制とは国民に対する“感情労働”だ」という考えに至った明仁天皇(平成天皇)と、この国で生きる人々とのディスコミュケーションが、公的な天皇を支えているというパラドックス……天皇制は本当に私たち日本人に必要なのか?政治的利用から離れて天皇は存続可能なのか?など、天皇制への思考の入口として読まれるべき一冊。

「反緊縮!」宣言』(松尾匡・編)
※「金がない、と言われたら、誰も何も言い返せない。財政赤字というものが、人を殴る棒のようになった」「負担を共有することの断固たる拒否、他者に対するあからさまな敵意、世界のすべてを勝ちか負けかで判断する態度、こういうものの中心にあるのが、もうこの国には、この世界にはお金がないんです、という強固な信念で、この信念がさまざまなヘイトスピーチや自己責任論を生み出して、全体として緊縮文化とでもいうべきものができあがってしまった」という岸政彦氏のエッセイをはじめ、論者それぞれが今の日本社会の不寛容さに触れており、そうなったのは緊縮政策のせいだという主張が通底している。(というわけで、私も「反緊縮」に賭けてみたいと思うようになった一冊)

ブラックバード』(マイケル・フィーゲル)
※刹那的にテロを起こした殺し屋が、その場にいた8歳の少女を攫い、彼女が18歳になるまでの歳月を共にする物語。その出だしからして、愛も優しさも救いもない、めちゃくちゃな話だが、徐々に非日常的な二人の日常が醸し出す不思議な叙情性に引き込まれ、完読。

父権制の崩壊 あるいは指導者はもう来ない』(橋本治)
※父権制の幻想など、自分の中ではとっくの昔に崩壊しているが、この国を牛耳っている連中は、未だにその幻想にしがみついているようだ。で、読みながら思った。「(日本社会が加速度的に衰退・劣化している)今こそ、橋本治が必要なのに…」と。

国体論 菊と星条旗』(白井聡)
※“発狂した奴隷たち”と題された一節。「結局のところ、(戦後対日支配の要点を、日本人の欧米人に対するコンプレックスとアジア諸民族に対するレイシズムを利用することだと見なしていた)アメリカが戦後日本人に与えた政治的イデオロギーの核心は、自由主義でも民主主義でもなく、「他のアジア人を差別する権利」にほかならなかった」という指摘に、「なるほど」と頷かざるを得なかった。

以上。今年も当ブログをご愛顧のほど、宜しくお願い致します。

2020年が、皆様にとって素晴らしい一年でありますように。

 

2019/12/23

勝手にコトノハ映画賞


《外国映画部門》
●最優秀作品賞
ROMA』(監督:アルフォンス・キュアロン/メキシコ・アメリカ、2018年)
※静かに深く心揺さぶる「女と愛と人生の物語」。ラストカットがとても印象的。
タレンタイム ~優しい歌』(監督:ヤスミン・アフマド/マレーシア、2009年)
※様々な言語と文化の衝突と包摂を描いた珠玉の青春群像劇。音楽も素晴らしかった。

●優秀作品賞
誰がための日々』(監督:ウォン・ジョン/香港、2016年)
※「希望は、人の心の中にのみある」ことを実感させられる社会派・香港映画の傑作。
工作 黒金星と呼ばれた男』(監督:ユン・ジョンビン/韓国、2018年)
※ハラハラドキドキからの(まさかの)感涙……熱き男たち必見のポリティカル・サスペンス。やはり、韓国映画は凄い!
ラスト・ムービースター』(監督:アダム・リフキン/アメリカ、2018年)
※バート・レイノルズの遺作となった、笑えて泣けるヒューマン・コメディ。映画愛に満ちた一本。
希望の灯り』(監督:トーマス・ステューバー/ドイツ、2018年)
※舞台は東西ドイツ統一後のライプツィヒ。地元のスーパーマーケットで働く人達のささやかな日常を描いた作品。「資本主義」に置き去りにされた悲しみを抱える人々の日常、その情けと哀しみと優しさがじんわり胸に沁み入った。
台北暮色』(監督:ホワン・シー/台湾、2017年)
※暮れ行く空と続いていく人生……いつまでも観ていたいと思わせてくれる映画。ありのままの台北は様々な色で満ちていた。

その他。スパイク・リーの『ブラック・クランズマン』、イーストウッドの『運び屋』、ドイツ映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』、タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、主演ホアキン・フェニックスの『ジョーカー』、ジャ・ジャンクーの『帰れない二人』、“衝撃と奇跡の実話”『ホテル・ムンバイ』、インド映画『バジュランギおじさんと小さな迷子』、スコセッシの『アイリッシュマン』などなど、2019年は見応えのある作品が多かった。

監督賞
ヤスミン・アフマド(『タレンタイム』、『細い目』)
※素晴らしい作品を遺し、51歳でこの世を去った彼女に敬意と感謝を込めて。

●主演男優賞
ファン・ジョンミン(『工作 黒金星と呼ばれた男』)
※ソン・ガンホと並ぶ韓国の名優。(観る側の)緊張の糸が一瞬たりとも緩むことのないのは、その細やかな演技あればこそ。

●主演女優賞
チャオ・タオ(『帰れない二人』)
※全うされない愛に翻弄されながらも強かに逞しく生きる女……気がつけば、映画そのものの印象より、この人の姿が強く心に残っていた。

●助演男優賞
イン・ソンミン(『工作 黒金星と呼ばれた男』
※ファン・ジョンミンに負けず劣らずの名演技。(ラストシーンには泣かされました)

●助演女優賞
アリエル・ウィンター(『ラスト・ムービースター』)
※パンクな容姿に、ピュアな心。主演バート・レイノルズを反射する鏡として、十分な存在感を放っていた。

●特別賞
『風櫃(フンクイ)の少年』(監督:ホウ・シャオシェン/台湾、1983年)
※終わりを迎える少年期への感傷と、大人になることへの焦燥……昔も今も、台湾は青春映画の宝庫。

●長編ドキュメンタリー映画賞
主戦場』(監督:ミキ・デザキ/アメリカ、2018年)

《邦画部門》
●最優秀作品賞
よこがお』(監督:深田晃司/2019年)
※一時たりとも緊張感が途切れない厚みのあるサスペンス映画。タイトルもドンピシャ。

●優秀作品賞
ひとよ』(監督:白石和彌/2019年)
新聞記者』(監督:藤井道人/2019年)

●監督賞
深田晃司(『よこがお』)

●主演男優賞
松坂桃李(『居眠り磐音』、『新聞記者』)

●主演女優賞
筒井真理子(『よこがお』)

●長編ドキュメンタリー映画賞
『きずあと 101歳 戦争と平和のレクイエム』(製作:東海テレビ、2016年)
『米軍が最も恐れた男 その名はカメジロー』(監督:佐古忠彦、2017年)

P.S.
「師走」とはよく言ったもの。本業(珍しくラジオCMの仕事が入った!)と副業(アクシデント続出)で、めっちゃ忙しい2週間(上旬)を過ごしたと思ったら、その後は体調不良に陥り、お尻の「痛み」と、背中の「痒み」で三日にあげずの医者通い。(体調の方は、ここ3、4日で一気に良くなり、何とか元気に新年を迎えられそう…)
で、その間、4Kテレビの購入(寿命なのか、今のテレビが全く映らなくなった)を契機に、プロバイダーをジェイコムからソフトバンク光に切り替えたり(故に、24日以降、現在のEメールアドレスが使えなくなる)、Windows7のサポートが打ち切られるということでパソコンも買い替える羽目になったり、もう、いろいろ重なって、心身共にてんやわんや。かつてないほど、慌ただしい年の瀬になってしまった。

というわけで、年内のブログの更新はこれがラスト……(の予定)

様々な事情で更新が滞る事の多い一年でしたが、今年も「コトノハ舎ブログ」を読んでいただき、本当にありがとうございました。
来るべき2020年が、皆様にとって素晴らしい一年でありますように。