『木挽町のあだ討ち』(監督:源孝志/2026年製作)
《時は江戸時代。ある雪の降る夜、木挽町の芝居小屋「森田座」のすぐ近くで、美しい若衆・菊之助が父の仇討ちを見事に成し遂げた。その事件は多くの人々に目撃され、美談として語られることになる。1年半後、菊之助の縁者だという侍・総一郎が、仇討ちの顛末を知りたいと森田座を訪れる。菊之助に関わった人々から事件の経緯を聞くなかで徐々に事実が明らかになり、やがて仇討ちの裏に隠された「秘密」が浮かび上がる(映画.comより)》というミステリー時代劇。(直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞した永井紗耶子の同名小説を映画化)
どこか「オリエント急行殺人事件」(アガサ・クリスティ原作)を思わせる、謎めいた筋立て。主演の柄本佑をはじめ俳優陣もなかなか豪華で好ましく(特に「芳澤ほたる」役の高橋和也、「作兵衛」役の北村一樹)、中弛みなく楽しめる作品だったが、“時代劇離れ”の若者をターゲットにしている所為だろうか、時代劇慣れした年寄りには若干の物足りなさが残る。特にラスト近く、大写しされる書状の文言「じぶんのために生きなはれ」には(そんなことわざわざ言わなくても…)と“どっちらけ”。で、これで興ざめしたのも束の間、さらにエンドロール(に流れた曲)で“あだ討ち”ならぬ追い打ちに合うとは!!…(「椎名林檎」の自己主張ソング「人生は夢だらけ」。彼女のファンには申し訳ないが、絶望的に合わなかった)
『金子文子 何が私をこうさせたか』(監督:浜野佐知/2025年製作)
《約100年前に日本の国家権力に全力で抗った虚無主義者・無政府主義者の金子文子を主人公に、死刑判決から獄中での自死に至るまでの121日間を描いた伝記ドラマ。「雪子さんの足音」などの女性監督・浜野佐知が、金子文子の生の声を伝える短歌をもとに、彼女の孤独な闘いを描き出す。(映画.comより》
映画『金子文子と朴烈(パクヨル)』及びブレイディみかこ氏の著書『女たちのテロル』(岩波現代文庫)を通じて「金子文子」の生涯及びその“人となり”については大まかに知ってはいたが、改めて「金子文子」という人間の無二性&自我の“凄味”を見せつけられたような強烈かつ鮮烈な一本。(エンドロールが流れた後、渋谷「ユーロスペース」館内に何人かの拍手の音が鳴り響いた)
特に印象的だったのは、主演の菜葉菜(なはな)をはじめ、女優陣が互いに連帯しているかのように醸し出す相乗的な存在感が、より個性を際立たせ異彩を放っていたこと。幼い文子を苛め抜いた祖母役の吉行和子(この作品が遺作とは…流石、和子さん!)、元・日活ロマンポルノの女王・白川和子(地元寺の僧侶婦人役)、そして、週刊文春でのキレキレの映画評論で(個人的に)お馴染みの“サバイバー”女優・洞口依子(仏道婦人之会・教誨師役)……とにかく、みんな凄い。色々あって今なお女優として輝き続けているのが凄い!と、心底思えた。
で、“凄い”と言えば、「キナ臭さや排外主義が広がる社会に“金子文子”という爆弾を投げ込む」という強い意志のもと、この作品を世に送り出した監督の浜野佐知(74歳)も然り。女性の居場所など全くなかった昭和40年代のピンク映画界に18歳で飛び込み、セクハラパワハラに立ち向かいながら経験を積み、1971年にデビュー。85年には自身の会社「旦々舎」を設立しピンク映画界の売れっ子監督になった。というのだから“凄い”に「超」がつくレベル(作品数は何と200本以上!)。
「権力を笠に着、それにしがみつく男どもが束になってもひるまない個の尊さ。権力対シスターフッド。最も描きたかったことでした」という彼女の言葉通り、その“爆弾”は見事に男たちの胸で炸裂したように思う。(願わくば、男たちのみならず、“権力を笠に着て”浮かれ騒ぐ女性総理・高市早苗の頭の中でも炸裂して欲しいが…)というわけで、とりあえず今年の邦画ベストワン!
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(監督:フィル・ロード、クリストファー・ミラー/2026年製作、アメリカ)
《アカデミー賞7部門にノミネートされた「オデッセイ」の原作「火星の人」などで知られる作家アンディ・ウィアーのベストセラーSF小説を映画化。滅亡の危機に瀕した地球の運命を託された中学の科学教師が、宇宙の果てで同じ目的を持つ未知の生命体と出会い、ともに命を懸けて故郷を救うミッションに挑む姿を描く。(映画.comより)》
「ヘイル・メアリー」って何?誰のこと?と思ったら、「聖母マリア」のことらしく、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」というタイトルを日本語に訳すと「神様助けて!プロジェクト(=一か八かの神頼み計画)」となるようだ(なるほど。正にタイトル通りの展開)……「地球を救え(そのために選ばれたお前が犠牲になれ)」という半強制的なミッションにより、無理矢理12光年離れた星に向かわせられる(帰る術のない「地獄への片道きっぷ」)主人公グレース(ライアン・ゴズリング)の悲惨かつ絶望的状況に同情しつつ、その悪戦苦闘ぶり&宇宙での思いがけない出会い(何と同じ目的を担う異星人がいた!)に、ハラハラ、ニンマリ、ほっこりさせられながらの2時間半。“絶体絶命、1人ぼっち”の状況で、よくそんなに前向きになれるなあ。しかもけっこう楽しそうだし……と、妙に感心させられる一級品のコメディ映画だった。(SFサスペンスだと勝手に思って観に行った自分がバカに思えたが、結果オーライ。ビートルズの名曲『Two Of Us』が、イイ感じで使われていた点も◎)



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