2026/03/02

2月中のあれこれ①


22(月)

日本領サイパン島の一万日』(著者・野村進/中公文庫)読了。

第一次世界大戦後に日本の委任統治領、太平洋戦争では日米の激戦地となって、五万七千(うち民間人一万数千)もの死者を出した元・日本領サイパン。移民によって開墾され、「南洋の東京」として栄えた、その繁栄と戦禍の歴史を、「楽園」を求めて南の島に渡った二つの家族を通して描いた(一気読み必至!の)傑作ノンフィクション。驚嘆というほかない地道な取材力で、忘れられた歴史を蘇らせた著者に感謝&大拍手。(ちなみに本書の“解説”は「この人が“解説”する本にハズレなし!」と以前から信頼を置いている「池澤夏樹」。やはり今回も当たり!だった)

以下「目次」

第1章 漂着/第2章 獣の島/第3章 南洋成金/第4章 南洋の東京/第5章 北ガラパン二丁目大通り/第6章 南村第一農場/第7章 海の生命線/第8章 軍島/第9章 戦禍/第10章 収容所 エピローグ 解説・池澤夏樹

※南洋開拓の主な参加者となったのは、東北や沖縄など貧困に苦しんでいた“辺境”の人々。移住先のサイパンでも、出身地により内地人→沖縄人→朝鮮人→現地人の順で待遇に差がつけられ、戦局が厳しくなって真っ先に解雇され見捨てられたのは「土人」「三等国民」と呼ばれる日々を送った現地住民(チャモロ人やカナカ人)だったそうだ。正に「大日本帝国の素顔は植民地でこそあらわになった」という証左。

午後は(1時~)、友人の純ちゃんの家で旅仲間6人が集まって「新年会」。今年の旅行は「山形・米沢」に決まった。幹事(主にプラン作成)はワタシ。

27(土)

駅前の図書館で見つけた寺山修司の『ぼくが戦争に行くとき』(1969年に刊行された単行本の文庫化)の中に「土産は、はずれ馬券」というアメリカのハードボイルド文学の先駆者ネルソン・オルグレン(何と、あのシモーヌ・ド・ボーボワール女史の恋人だったとか)との交流が綴られている一節があった。ちょっと長いが書き留めておきたい。

《(前略)ガラクタを集めるのは彼の趣味らしく、中山の競馬場では、レースのあとの散らばっている、はずれ馬券をポケット一杯にしまいこんで「仲間にいい土産ができた」などとエツに入っていた。京都に全く興味を示さないところが、いかにもオルグレンらしく、もっぱら吉原、浅草でヌード・スタジオをひやかしたりしていたが、彼自身の本領は、むしろリチャード・ライトが指摘しているように「歴史的に根こそぎにされ、定まった形を持たない階層、つまり従順で不安定で内的均衡を欠き、どの階級にも属していないが、それでいてしかも熱烈で正直で、盲目的な渇望をいつもいだいている」人たちの怒りを代弁することである。

中山のオケラ街道で、泣き買や香具師をひやかしながら、同時にアメリカのベトナム戦争の責任をきびしく弾劾するオルグレンは、きわめて体温のある作家、肉声的な作家だ、ということができるだろう。

「ジェームス・ボールドウィンをどう思うかって?」と彼はいった。

「彼は、男色家しか友人じゃないと思っているんだ。そのくせ、彼と寝るのは白人ばっかりだ」

この批評は、そのままボールドウィン文学の本質に触れるものがある。

彼にとっては全米図書賞(アメリカで最も権威ある文学賞)や、ヘミングウェイの高い評価はほとんど問題ではなく、むしろ「もはや、文学では出来なくなってしまった」領域の狩猟にだけに魅かれているように見えた。六十歳近くなっても家庭を持たないオルグレン、彼がこの日曜日に立って行った先はベトナムであった。》

読んだ後、無性にオルグレンの作品が読みたくなって、ネットで調べた所、すべて絶版&高額(中古本)。代表作『黄金の腕』(文庫)は、アマゾンで3万円……お手上げ!だった。 


午後、衆議院選の期日前投票。(既に結果は見えているし、強く推したい人もいなくて、あまり投票意欲は湧かなかったのだが)比例は「れいわ」、地方区は“仕方なく”「中道」に。

28(日)

衆議院選挙。結果は予想通り「高市自民(&電通)の圧勝」。所謂「高市鬱(うつ)・選挙鬱」の悪化を避けるべく、選挙特番も見ず、翌朝の新聞も読まなかった。それゆえ特に感想はないが、政権の側からではなく、国民の側から(特に若者の側から)事実上「大政翼賛会(の推進)」を望んだ形になったということ。

今後は恐らく、戦後民主主義もリベラルも平和憲法もあっさり捨てて、軍拡路線まっしぐら。排外主義はさらに蔓延り、スパイ防止法(という名の治安維持法)も成立、その分、福祉や医療・介護はおざなり、個人の自由は制限され、よりあからさまに「反中・親米(というか追従)」へ向かうのでしょう。

(新しい戦前ならぬ新しい大日本帝国の復活。もしくは戦前を模した「天皇を中心とした一つの新興宗教国家」への回帰……どちらにしても“日本沈没”への道の始まりでは?)

正直、老い先短い?人生。近い将来、徴兵制が導入されようが、トランプ追従で世界から冷たい視線を浴びようが、全国各地の原発がどこぞの国のミサイルやテロリストの標的になろうが「オレの知ったこっちゃないぜ」と、一人ヤケクソ気味に啖呵を切って静かに生きるほか無し……(と思ったが、まずは長い付き合いの「仲間」と楽しく呑みつつ“鬱”を労わり合うのが先決。為政者のみならず世界中の悪意・悪行に屈しないためにもね)